中小企業の業務自動化、n8n・Make・GAS をどう使い分けるか(判断表つき)

Google Workspace で完結するか、作ったあとに誰が直すか、件数と予算はどれくらいか。この順に答えると、n8n・Make・GAS のどれで作るかが決まります。

(2026年10月17日更新)

業務自動化の受託をしているエンジニアとして、n8n(セルフホスト版 2.43.7)を模擬サーバーにつないで動かして確かめたことと、Make・Google Apps Script(GAS)の公式情報をもとにまとめた判断基準です。Make と GAS では、この記事のための検証はしていません。

受託の現場では「どのツールで作るか」より先に「その業務を誰が、どんな手順で、何件こなしているか」を見ます。ツール選びはその後です。そのうえで、どれにするか迷ったときの目安をまとめました。

結論:判断表

1から順に答え、「〜へ」と書かれた質問に進んでください。GAS や n8n Cloud に決まった場合も、予算と件数は後の「予算」の節で確かめてください。

質問 はい いいえ
1. Google Workspace(スプレッドシート・Gmail など)の中だけで完結するか GAS を第一候補に 2 へ
2. 社内に、コードやサーバーを保守できる人がいるか 3 へ 4 へ
3. 予算をほぼ0円にしたい、または月の実行回数が数万回以上か n8n セルフホスト(サーバー代は別) 4 へ
4. つなぐ外部サービスに、Make の公式の連携部品があるか 5 へ n8n Cloud(HTTP Request で API を直接呼ぶ)
5. Make の消費が月20,000クレジット以内に収まりそうか(1時間ごとの確認なら、1日およそ320〜640件まで) Make(まず Free で消費を確かめる) n8n Cloud も比べる
  • 予算がほぼ0円で、保守する人もいない場合は、質問4・5で Make に進み、Free(月1,000クレジット)から試すのが現実的です
  • 質問5の20,000クレジットは、Make Core と n8n Cloud Starter の料金が入れ替わる目安です。根拠の試算は「n8n と Make の料金比較」にあります

この表は一般的な目安です。実際には業務ごとに、件数やデータの扱いで変わります。

3つのツールの違い

比べる点 n8n Make GAS
作り方 画面でノードをつなぐ(コードも書ける) 画面でモジュールをつなぐ JavaScript でコードを書く
動く場所 Cloud か自社サーバー Make のクラウド Google のクラウド
課金の数え方 ワークフロー1回の実行で1回 モジュール1回の実行で1クレジット 公式の概要ページに料金の記載なし(上限あり)
得意 多くの手順、大量の実行、自社サーバーでの運用 公式の連携部品が多い SaaS どうしの連携 Google Workspace 内の処理

課金の数え方の違いは大きい

n8n は、ワークフローを1回動かすと1回と数えます。途中の手順の数では増えません(出典: n8n 料金ページ、2026-10-16 確認)。

Make は、モジュール(手順)が1回動くごとに1クレジットが基本です。多くのモジュールは、データ量によらず1クレジットです(出典: Make Help「Credits」)。なお Make は2025年に、課金単位の名前を operations から credits に変えています(Make の公式ヘルプの説明による)。

わたしたちの検証では、n8n で「kintone からレコードを取得し、1件ずつ Chatwork に投稿する」ワークフローを動かしました(模擬サーバーで検証)。2件のレコードに対して投稿が2回送られ、課金上は1回の実行でした。

同じ処理を Make の kintone アプリで組むと、新しいレコードの確認1回+投稿2回で、3クレジット前後になる見込みです。HTTP で取得して分割(Iterator)を使う組み方で、分割も件数分数えるなら5クレジット前後です。分割の数え方は公式で確認できていません。どちらも公式の数え方からの計算で、Make では検証していません。

件数が増えるほど Make の消費は増えます。ただし Make はクレジットの単価が安いので、1日数百件までは Make のほうが安く済むことが多いです。件数ごとの試算は「n8n と Make の料金比較」にあります。

GAS が合う場合

GAS は、Google が提供する JavaScript の実行環境です。スプレッドシートや Gmail を操作する処理を、Google のクラウドで動かせます。

合う条件

  • データがスプレッドシート・Gmail・Google カレンダーなどに収まっている
  • 社内に、JavaScript を読み書きできる人がいる
  • 追加の契約を増やしたくない

GAS の公式の概要ページには、料金の記載がありません。制限は「クォータ(利用上限)」として示されています。

項目 個人の Google アカウント Google Workspace アカウント
1回の実行時間 6分 6分
トリガーの合計実行時間 1日90分 1日6時間
外部への HTTP 呼び出し(URL Fetch) 1日20,000回 1日100,000回
メール送信の宛先数 1日100件 1日1,500件

(出典: Google Apps Script「Quotas for Google Services」、2026-10-16 確認。公式ページには「予告なく変更されることがある」と書かれています)

1回の実行は6分までという制限は、件数の多い処理で効いてきます。大量の行を処理するなら、分割して動かす工夫が要ります。

受託での使い分けの例

わたしたちが支援している案件では、業務ごとに GAS とクラウドのサービスを組み合わせて使っています。扱うデータには、1か月分で5万〜11万行を超える CSV もあります。この量になると、1回6分の制限の中に収まるかどうかが、GAS で作るかクラウド側に置くかを考える材料の一つになります。

GAS の注意点

  • 書いたコードを保守する人が必要です。作った人がいなくなると、直せなくなることがあります
  • kintone・Chatwork・LINE など外部のサービスとつなぐには、各サービスの API を自分で呼ぶコードを書きます

Make が合う場合

Make は、画面上でモジュールをつないで自動化を組むクラウドサービスです。サーバーの保守はいりません。

合う条件

  • コードを書ける人がいない、または頼りたくない
  • つなぐサービスに、Make の公式の連携部品がある
  • 実行回数がそれほど多くない

連携部品の例

Make には、kintone と Chatwork の連携部品があり、どちらも「Verified」と表示されています(出典: Make 連携ページ、2026-10-16 確認)。LINE は Messaging API で接続するアプリがあり、プッシュメッセージを送る「Send a Push Message」があります(同)。

一方、n8n の組み込みノードには kintone・Chatwork がありません(出典: n8n リポジトリ)。n8n では HTTP Request ノードで API を直接呼ぶか、個人が公開しているコミュニティノードを使います。画面の部品だけで組みたいなら、Make のほうが手軽です。

Make の料金

Make の料金は米ドル建てで、月のクレジット数で変わります。10,000クレジット/月のときの表示は次のとおりです(出典: Make 料金ページ、2026-10-16 にブラウザで確認)。

プラン 年払い時の月額 円換算(年払い) 月払いの月額 円換算(月払い)
Free $0(月1,000クレジット) 0円 $0 0円
Core $9 約1,350円 $10.59 約1,590円
Pro $16 約2,400円 $18.82 約2,820円
Teams $29 約4,350円 $34.12 約5,120円

1ドル=150円で換算しています(2026-10時点の概算)。税と為替手数料は含みません。クレジットを増やすと、Core の年払いは 20,000 で $16、40,000 で $29、80,000 で $55 です。

注意点が2つあります。

  1. クレジットが尽きると、シナリオ(自動化)は止まります。 追加のクレジットは購入できます
  2. 無料プランでは、定期実行の最短間隔が15分です(出典: Make Academy)。有料プランは最短1分(Make Academy の記載)です

Make の公式サイト: https://www.make.com/

n8n が合う場合

n8n は、ノードをつないで自動化を組むツールです。Cloud(n8n 社のサーバー)と、自社サーバーで動かすセルフホスト版があります。わたしたちも、自社の業務では n8n を Google Cloud 上で自分たちで動かしています。

合う条件

  • 手順の多い処理や、件数の多い処理がある
  • 外部の API を HTTP Request ノードで直接呼ぶことに抵抗がない
  • (セルフホストなら)サーバーを保守できる人がいる

わたしたちの検証で確かめたこと

セルフホスト版(Docker イメージ 2.43.7)で、次のワークフローを動かしました。kintone・Chatwork・LINE には、公式の仕様をまねた模擬サーバーにつないでいます。

  1. kintone の新規レコードを Chatwork に通知。 前のノードの件数ぶん、次のノードが自動で繰り返されました。ループを組む必要はありませんでした
  2. 問い合わせフォームを LINE に通知。 Webhook でフォームの内容を受け、LINE の Messaging API に送りました。受け取った値は $json.body.name のように body の下に入ります
  3. 認証エラーの表示。 kintone のトークンを間違えると、n8n は 401 のエラーで止まり、kintone のエラーコード(CB_WA01)が表示されました

HTTP Request ノードに慣れれば、公式の連携部品がないサービスでも、API の仕様どおりに組めます。

n8n の料金

形態 プラン 表示価格 実行回数(月)
Cloud Starter 20€ /mo, billed annually 2,500
Cloud Pro 50€ /mo, billed annually 10,000
セルフホスト Community Edition 無料(サーバー代は別) ソフト側の上限なし

価格はユーロ建てで、年払いにしたときの月額です。1ユーロ=165円で換算すると、Starter は約3,300円、Pro は約8,250円です。月払いは Starter 24€(約3,960円)、Pro 60€(約9,900円)です。いずれも2026-10時点の概算で、税・為替手数料は含みません。

Cloud で月の実行回数の上限に達すると、それ以降の実行はエラーで失敗します(出典: n8n サポート記事)。Cloud には14日間の無料試用があります(出典: n8n Docs)。

セルフホスト版のライセンスは Sustainable Use License です。オープンソースのライセンスではありません。自社の業務での利用はできます。詳しくは「n8n Cloud とセルフホスト版、どちらを選ぶか」にまとめました。

n8n の公式サイト: https://n8n.io/

5つの観点で、もう少し詳しく

社内に保守する人がいるか

一番大事な観点です。どのツールも、作ったあとに直す人が要ります。

  • GAS:コードを読める人がいないと、直せません
  • n8n セルフホスト:サーバーの更新・バックアップをする人が要ります
  • Make・n8n Cloud:サーバーの保守はいりません。画面の操作が分かる人がいれば直せます

Google Workspace 内で完結するか

スプレッドシートの集計、Gmail の自動返信、カレンダーの登録など、Google の中で終わる処理は GAS で足ります。外のサービスが増えるほど、Make や n8n の画面で流れを見られる利点が大きくなります。

外部 SaaS の数と、API があるか

つなぐサービスが多いなら、まず「公式の連携部品があるか」を調べます。Make は kintone・Chatwork の部品があり、n8n の組み込みノードにはありません。部品がない場合は、どのツールでも API を直接呼ぶことになります。

API そのものがないサービスもあります。受託の現場では、API 連携ができない SaaS について「CSV のダウンロードは手作業のまま残し、アップロードしたあとの集計と可視化だけを自動にする」と割り切ったことがあります。全部をつなごうとせず、手で残す部分を決めるのも選択肢です。

予算

予算 選択肢
ほぼ0円 GAS、n8n セルフホスト(サーバー代は別)、Make の Free(月1,000クレジット)
月1,000〜5,000円程度 Make Core(10,000〜40,000クレジット、年払いで約1,350〜4,350円)、n8n Cloud の Starter(年払いで約3,300円)
月8,000円前後 n8n Cloud の Pro(年払いで約8,250円)、Make Core 80,000クレジット(年払い $55、約8,250円)

ツールの前に、自動にする範囲を決める

1つのツールに決める必要はありません。スプレッドシート内の集計は GAS で行い、外部サービスへの通知は n8n か Make で行う分け方もあります。ただし、ツールが増えるほど保守する対象も増えます。担当者が把握できる数にとどめましょう。

もう一つ、受託で繰り返し感じるのは「どこまでを自動にするか」の線引きのほうが、ツール選びより効果に響くことです。たとえば、1日3〜20件届く請求書メールの添付を対象ごとのフォルダに整理する業務では、メールの形式がばらばらで機械の判別は精度的に厳しいと判断しました。そこで、どの対象の請求書かのラベル付けは人が行い、その後のフォルダへの振り分けだけを自動にしています。生成 AI は使っていません。全部を自動にしなくても、手間の大きい部分が減れば十分に効果が出ます。

まとめ

  • Google Workspace の中で完結し、コードを保守できる人がいるなら GAS が向いています
  • コードを書ける人がおらず、公式の連携部品があるサービスどうしなら Make が組みやすいです
  • 手順や件数が多いなら、実行回数で数える n8n が有利です。保守できる人がいればセルフホスト版も選べます
  • 最初の判断基準は「作ったあとに、誰が直すか」です。その前に「どこまでを自動にするか」を決めます

実際の件数で試すなら、n8n Cloud の14日間の無料試用か、Make の無料プランから始められます。

参考にした公式情報

自動化のご相談

どのツールで作るか決めきれない、そもそもどの業務から手をつけるべきか分からない、という段階からご相談いただけます。合同会社frectas では、業務の手順と件数を確かめたうえで、GAS・n8n・Make・クラウドのどれで作るか、どこを人の手に残すかを一緒に決め、構築と運用まで担当します。お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

よくある質問

n8n・Make・GAS のどれから検討すればよいですか?

スプレッドシートや Gmail など Google Workspace の中だけで完結するなら GAS が第一候補です。外部のサービスをつなぐなら、保守できる人がいるか、Make の公式の連携部品があるか、月の件数がどれくらいかで n8n と Make を選びます。

GAS に料金はかかりますか?

GAS の公式の概要ページには料金の記載がなく、制限はクォータ(利用上限)として示されています。1回の実行は6分まで、外部への HTTP 呼び出しは個人アカウントで1日20,000回などです(2026-10-16 確認)。

Make と n8n で料金の数え方はどう違いますか?

n8n はワークフローを1回動かすと1回と数え、途中の手順の数では増えません。Make はモジュール(手順)が1回動くごとに1クレジットが基本なので、件数と手順が増えるほど消費が増えます。

ツールを1つに決める必要はありますか?

ありません。スプレッドシート内の集計は GAS、外部への通知は n8n か Make、と分けることもできます。ただしツールが増えるほど保守する対象も増えるので、担当者が把握できる数にとどめます。

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