業務自動化の受託をしているエンジニアとして、n8n のセルフホスト版(Docker イメージ 2.43.7。2026-10-16 時点の最新の安定版)を実際に起動して確かめた内容と、n8n 公式の料金ページ・ドキュメントで確認した内容をまとめました。n8n Cloud は契約しておらず、Cloud の部分は公式情報に基づく解説です。わたしたちは自社の業務では、n8n を Google Cloud 上で自分たちで動かしています。
結論:保守できる人がいなければ Cloud、いればセルフホストを検討
- 社内にサーバーを保守できる人がいないなら、n8n Cloud が向いています。サーバーの保守を自分でしなくて済むからです(バージョンの更新は、管理画面から利用者が行います)
- Docker とサーバーの面倒を見られる人がいて、社内の業務で使うだけなら、セルフホスト版(Community Edition)が向いています。ソフトウェアの利用料はかかりません
| 比べる点 | n8n Cloud | セルフホスト版(Community Edition) |
|---|---|---|
| 料金 | Starter 20€・Pro 50€(年払い時の月額) | ソフトの利用料は無料。サーバー代は別 |
| サーバーの用意 | 不要 | 自分で用意(VPS・社内サーバー・クラウドなど) |
| サーバーの保守 | n8n 側 | 自分で行う |
| バージョンの更新 | 管理画面から利用者が行う | 自分で行う |
| バックアップ | ― | 自分で行う |
| 実行回数の上限 | プランごとにあり | ソフト側の上限はなし。サーバーの性能しだい |
| 一部の機能 | プランによる | 使えない機能あり(後述) |
n8n Cloud の料金
n8n の料金はユーロ建てです。料金ページに表示される金額は、年払いにしたときの1か月あたりの額です(出典: n8n 料金ページ、2026-10-16 確認)。
| プラン | 表示価格 | 円換算の目安(年払い時) | 実行回数(月) | 提供形態 |
|---|---|---|---|---|
| Starter | 20€ /mo, billed annually(月払いは 24€) | 約3,300円 | 2,500 | Cloud |
| Pro | 50€ /mo, billed annually(月払いは 60€) | 約8,250円 | 10,000 | Cloud |
| Business | 667€ /mo, billed annually(月払いは 800€) | 約110,000円 | 40,000 | セルフホストのみ |
| Enterprise | 個別見積もり | ― | 個別 | ― |
1ユーロ=165円で換算しています(2026-10時点の概算)。税と為替手数料は含みません。
- 「billed annually」は年払いの意味です。 年払いの切り替えには「Annually (Save 17%)」と書かれています
- 月払いにすると高くなります。 料金ページを「Monthly」に切り替えると、Starter 24€・Pro 60€・Business 800€(いずれも /mo, billed monthly)と表示されます。円換算の目安は Starter 約3,960円・Pro 約9,900円です
- Business はセルフホスト専用です。 料金ページに「The Business plan is currently only available for self-hosted n8n.」とあります
実行回数の数え方
n8n はワークフローを1回動かすごとに1回と数えます。途中のステップ(ノード)の数では増えません(出典: n8n 料金ページ)。
わたしたちの検証でも、4つのノードで Chatwork への投稿を2回送るワークフローを動かしました。これは課金の数え方では「1回の実行」にあたります。ステップが多い処理ほど、n8n の数え方は有利になります。
Cloud で月の上限に達すると、その後の実行は待たされずにエラーで失敗します。ワークスペースが止まるわけではなく、上限は請求日ではなく暦月の初めに自動でリセットされます。失敗した実行は回数に数えません(出典: n8n サポート記事、2026-10-16 確認)。この扱いは料金ページ自体では確認できていません。
Cloud の無料試用は14日間で、試用中は実行回数1,000回までという制限があります(出典: n8n Docs)。永年無料の Cloud プランは、公式の画面では確認できませんでした。
セルフホスト版のライセンス:「オープンソース」ではない
セルフホスト版は GitHub で公開され、無料で使えます。ただし、ライセンスはオープンソースのライセンスではありません。 n8n 独自の Sustainable Use License です(出典: n8n LICENSE.md)。
- 利用は「自社の業務目的」か「非商用・個人の利用」に限られます。社内の業務を自動化する用途なら使えます
- 配布は、非商用で無料の場合に限られます
- 著作権表示などを消してはいけません
注意が要るのは、他社のために n8n を動かして料金をもらう使い方です。たとえば n8n を組み込んだサービスを販売する場合です。どこまで許されるかは、ライセンス本文だけでは判断しきれません。他社向けの有償提供を考えている方は、n8n の公式の条件を確認してください。外部に構築を頼む場合も、誰の環境で、誰の業務のために動かすのかを、依頼先とあわせて確認しておくと安心です。
Community Edition で使えない機能
セルフホストの無料版(Community Edition)は、ライセンスキーなしで動きます。公式ドキュメントは「almost the complete feature set」と説明しています。ただし、次の機能は含まれません(出典: n8n Docs「Community Edition features」、2026-10-16 確認)。
- 変数(custom variables)、Environments、外部シークレット
- ログストリーミング、マルチメイン構成
- Projects、SSO(SAML・LDAP)
- ワークフローと認証情報の共有
- Git によるバージョン管理
- External storage for binary data(バイナリデータの外部保存)
特に「ワークフローと認証情報の共有」がない点は大事です。公式ドキュメントでは、ワークフローや認証情報にアクセスできるのは、インスタンスの所有者と作成者だけとされています。複数の担当者で同じワークフローを触る運用には向きません。
メールアドレスを登録すると、無料のライセンスキーでフォルダ分けなど3つの機能が使えるようになります(同)。
セルフホストで実際に動かして分かったこと
n8n のセルフホスト版(Docker イメージ n8nio/n8n:2.43.7)を起動し、ワークフローを動かしました。最初に 1.121.0 で試し、2.43.7 でも同じ結果になることを確かめています。kintone・Chatwork・LINE には本物ではなく、公式の仕様をまねた模擬サーバーにつないでいます。
- Docker で起動でき、ポート 5678 でワークフローを受け付けました。 問い合わせフォームの受け口(Webhook)に
curlでデータを送ると、n8n はすぐに「Workflow was started」と返しました - 前のノードの件数ぶん、次のノードが自動で繰り返されました。 kintone から2件取ると、Chatwork への投稿が2回送られました。ループを自分で組む必要はありません
- 環境変数は、既定では式から読めませんでした。 式の中で
$envを使うと、ExpressionError: access to env vars deniedで止まりました。N8N_BLOCK_ENV_ACCESS_IN_NODE=falseを起動時に指定すると読めました。2.43.7 でも 1.121.0 でも同じです。本番では、トークンは環境変数ではなく Credentials(認証情報の保管機能)に置くほうが安全です - コマンドで取り込む場合は
versionIdが必要でした。n8n import:workflowでワークフローの JSON を取り込むと、versionIdがない JSON はエラーになりました - 2.x では、有効化は「公開(publish)」と呼ばれます。 コマンドで
n8n update:workflow --active=trueを使うと、非推奨と警告が出てpublish:workflowを使うよう表示されました(動作はしました)
画面(エディタ)の初期設定はこの検証ではしていません。画面の操作は公式ドキュメントに基づいて書いています。$env の既定値については公式ドキュメント内で記載が揃っていない点もあり、「n8n を社内に導入するときのセキュリティ確認項目」で詳しく扱っています。
版について
検証した 2.43.7 は、GitHub の最新リリースで、npm の安定版(stable)も同じ版です(出典: n8n のリリース一覧、2026-10-16 確認)。1.x から 2.0 では、有効化が「公開」に変わる、Start ノードが使えなくなる、などの破壊的変更がありました。公式ドキュメントには 3.0 の変更点のページもあり、今後の大型更新で手順が変わる可能性があります。新しく始める方は、その時点の公式の手順も確認してください。
セルフホストで増える仕事:運用・更新・バックアップ
セルフホスト版はソフト代が無料です。そのかわり、Cloud なら n8n 側がする仕事を自分で受け持ちます。
| 仕事 | 内容 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| サーバーの用意 | VPS やクラウドを契約し、コンテナを動かせるようにする | 最初に1回 |
| 外部からの接続 | Webhook を外から受けるなら、ドメインと HTTPS の設定。リバースプロキシの後ろでは N8N_WEBHOOK_URL で公開 URL を指定(2.35.0 から WEBHOOK_URL は非推奨) |
最初に1回 |
| 更新 | 新しいイメージを取得し、コンテナを入れ替える | リリースのたび |
| バックアップ | データの入ったボリュームを退避する | 定期的に |
| 障害対応 | 止まったときに気づいて再起動する | 随時 |
更新の手順
公式ドキュメントでは、docker run で動かしている場合の更新は次の流れです(出典: n8n Docs「Docker」、2026-10-16 確認)。
docker pull n8nio/n8nで新しいイメージを取得する- 動いているコンテナを止めて削除する
- 同じ設定でコンテナを起動し直す
なお、この docker run のページは公式に「古い」と注記され、Docker Compose での導入が推奨されています。Docker Compose なら docker compose pull・down・up -d の順です。
バックアップで守るもの
公式ドキュメントによると、/home/node/.n8n に置かれたデータには次のものが入ります。
- 既定のデータベース(SQLite):認証情報・実行履歴・ワークフロー
- 暗号化キー:認証情報を暗号化して保存するためのキー
認証情報はこの暗号化キーで暗号化されています(出典: n8n Docs「Set a custom encryption key」)。データベースと暗号化キーは、セットで退避してください。データベースだけ残っても、キーがないと認証情報を使えない状態になるおそれがあります。
どちらが合うか:判断のチェックリスト
セルフホスト版が合う方
次の条件にすべて当てはまるなら、セルフホスト版を検討する価値があります。
- 社内に Docker とサーバーを保守できる人がいる。その人が異動・退職しても引き継げる
- 使い道が自社の業務の自動化に限られる(他社への有償提供ではない)
- 「共有」「Projects」「SSO」など、Community Edition にない機能がいらない
- 更新とバックアップの作業時間を、毎月とれる
さらに、次のどれかに当てはまると、セルフホストの利点が大きくなります。
- 月の実行回数が Pro の10,000回を大きく超えそう
- データを n8n 社のサーバーに置きたくない社内事情がある
n8n Cloud が合う方
- サーバーを保守できる人がいない、または一人に頼りたくない
- 月の実行回数が、Starter(2,500回)か Pro(10,000回)に収まる
- まず14日間の試用で、自社の業務に合うか確かめたい
Cloud の料金と試用は、n8n の公式の料金ページ(https://n8n.io/pricing/)で確認できます。試用ボタンには「No credit card required」と表示されています。
迷ったときの進め方
- Cloud の14日間の試用で、ワークフローを1本作る
- 実行回数がどれくらいになるか、試用中に数える
- 回数が多く、保守できる人がいるなら、セルフホストに移す
ワークフローは JSON として書き出せます。Cloud で作ったものを、あとからセルフホストに移すこともできます。
受託の現場では、自社のクラウド環境で作った試作を、本番では顧客のクラウド環境に移すこともあります。その際は、移す先で必要なリソースと権限を先に一覧にしておくと、移行の段取りが立てやすくなります。n8n でも、最初にどこで動かすかを決めきれないなら、移すときに何が要るかを先に洗い出しておくのがおすすめです。
まとめ
- n8n Cloud は Starter 20€・Pro 50€(年払い時の月額、ユーロ建て)。Business はセルフホスト専用です
- セルフホスト版は無料ですが、オープンソースではなく Sustainable Use License です。社内の業務での利用はできます
- セルフホストは更新・バックアップ・障害対応を自分で持ちます。保守できる人がいるかで決めるのが現実的です
n8n Cloud を試すなら、n8n Cloud の14日間の無料試用から始められます。
参考にした公式情報
- n8n 料金ページ: https://n8n.io/pricing/ (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Cloud の無料試用: https://docs.n8n.io/manage-cloud/cloud-free-trial/ (2026-10-16 確認)
- n8n Sustainable Use License: https://github.com/n8n-io/n8n/blob/master/LICENSE.md (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Community Edition の機能: https://docs.n8n.io/hosting/community-edition-features/ (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Docker でのインストール: https://docs.n8n.io/hosting/installation/docker/ (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: 暗号化キーの設定: https://docs.n8n.io/hosting/configuration/configuration-examples/encryption-key/ (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Cloud の管理画面: https://docs.n8n.io/manage-cloud/cloud-admin-dashboard/ (2026-10-16 確認)
- n8n サポート: 実行回数の上限: https://support.n8n.io/article/can-you-reset-my-executions (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Webhook URL の設定: https://docs.n8n.io/hosting/configuration/configuration-examples/webhook-url/ (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: Security environment variables: https://docs.n8n.io/hosting/configuration/environment-variables/security/ (2026-10-16 確認)
- n8n のリリース一覧: https://github.com/n8n-io/n8n/releases (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: 2.0 の破壊的変更: https://docs.n8n.io/changelog/v20-breaking-changes (2026-10-16 確認)
- n8n Docs: リリースノート: https://docs.n8n.io/changelog/release-notes (2026-10-16 確認)
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